今日は、Twitterでとある方から頂いた質問に答えていきたいと思います。

頂いた質問は

カナダのこのようなトレイルはどの団体が整備、管理しているんですか? 日本に大っぴらにコースを紹介していることが少ないのは、どうしてだと思いますか?

と言った内容です。

ツイッターのリプライの文字数では収まり切らないなと思ったのと、折角なので記事にすることにしました。

カナダでトレイルを管理している団体

まず最初の質問である誰が管理しているのかという質問ですが、カナダと言っても国土が広すぎるので一つの団体が全てを管理することは不可能です。

私が今住んでいるブリティッシュコロンビア州(以降 BC州)だけでもTrailForksに登録されているトレイルは11075のトレイルがあり、登録されていないシークレットトレイルと言われるものを入れるともっと多くなるでしょう。

BC州だけでもこれだけの数のトレイルがあり、日本の国土より広く管理しきれません。

なので地域ごとにトレイルを管理している団体があります。

BC州には106のトレイル管理団体があります。例えば

ウィスラー

WORCA – Whistler Off Road Cycling Association

 

スコーミッシュ

SORCA – Squamish Off-Road Cycling Association

 

ペンバートン

PORCA – Pemberton Off-road Cycling Association

 

などといった団体が各地域のトレイルの管理を行っています。

画像クリックで各団体のウェブサイトへ飛びます。

今回は私が住んでいるウィスラーのトレイルを管理しているWORCAを例に説明しますが、他の団体もほとんど同じだと思います。

WORCAはトレイルの管理は勿論のこと、毎週水曜日と木曜日にレースを開催したり、青少年のサイクリストに安全性、エチケット、テクニックなどを教える為のキャンプを開催したりと、スポーツの進化を促進させるような活動も行っています。

毎週開催されているToonie RideやPhat Tuesdayと言ったレースに参加するには年会費を払ってWORCAの会員にならなければ参加出来ないので、私も勿論会員ですし、現在会員数は2000人程だそうですのでウィスラーに住んでいるマウンテンバイカーのほとんどは会員ではないでしょうか。

トレイル管理の為に更に募金をすることも出来、募金をするとトレイルサポーターのTシャツを貰えます。

これらの会員費が主なWORCAの資金源で、その他にはボランティアの力でウィスラーのトレイルは管理されています。

私の知り合いは冬に仕事をしてお金を貯めて、夏は働かずに趣味でトレイルビルドをしている方がいたり、バイクショップが声をかけてトレイルの整備をしたりと、ボランティアは個人からバイクショップと幅広い方々がトレイルの維持に努めています。

このようにウィスラーのトレイルは、WORCAとボランティアの努力によって維持されているのです。

あとは自転車メーカーがスポンサーに付いていたりしますね。

日本にオープンなトレイルが少ない理由

※これ以降は完全に私の思っている事であり、他の考え方や原因もあるので一つの意見として読んでください。

近年、すこし日本にもオープンなトレイルを作るといった計画があるといったようなことをちらほら聞きますが、まだまだ日本のトレイルは閉鎖的です。

私は京都に住んでいて主に京都・関西圏のトレイルをよく走っていましたが、ほとんどのトレイルは閉鎖的でオープンなところは少なく、どこのトレイルがマウンテンバイクに向いているなどといった情報は親しいグループ内でのみ共有され、外部に漏らす事はご法度と暗黙のルールで決まっています。

なぜこのように日本にはオープンなトレイルがないのか、私は、それは「マウンテンバイクという競技に対する認知度の低さ」が一つの大きな原因ではないかと思います。

日本で学校の友達や、バイト先のメンバーなど男女問わず、「趣味でマウンテンバイクをやっている」と言っても、大体「え?なにそれ?」といったような反応が帰ってきます。

カナダでは、女子に聞こうが誰に聞こうが、やっていないとしてもマウンテンバイクは知っています。

例えば知らない人が、自分の全く知らない事をしていたら「あの人、何やってるんだろう?」ってなりますよね。

それがどうでしょう、マウンテンバイクという競技を全く知らないハイカーが山を歩いている時に、自転車に乗った人がいきなり山を下ってくるのをみたらそりゃびっくりするだろうし、「自転車でよくこんなとこまで登ってきたねー。凄いねー」などと言ってくれる方も居ますが、中には「なに自転車で山の中を走っているんだ!不届き者め!」って思われる方もいます。

勿論私達は、ハイカー最優先でトレイルを走っていますが、トレイルをオープンにしてしまうとハイカーを脅かすような走りをする人が来るかもしれません。

そうなると余計にマウンテンバイクに対して反感をかってしまい、日本ではハイキングやトレランなどの方が一般的に知られているので、自転車の乗り入れ禁止などといった形で締め出されてしまいます。

こうならないように、マウンテンバイカーたちはトレイルを守ろうとした結果、閉鎖的になってしまうわけです。

一方、マウンテンバイクという競技が広く認知されていて、「同じトレイルでまた違った楽しみ方をしている人もいる」という理解があれば、そうはなりにくいですよね。

ウィスラーのマウンテンバイクの歴史

ウィスラーでも1989年代、マウンテンバイクは未知の競技としてトレイルユーザーとの競合を引き起こしていた所に、マウンテンバイクというスポーツの存在を確立して正当化するためのロビーとしてWORCAが設立されました。

その後スキーリゾートの成長とともに、事故の懸念から高山地帯へのマウンテンバイクの乗り入れが禁止されてしまいました。

なのでマウンテンバイカーは、トレイルを求め未開発のルートで密かににトレイルにアクセスする必要がありました。(今の日本に近いような状態だった時期がウィスラーにもあったんです)

そこでWORCAは諦めずに、自転車の乗り入れが禁止されていない、比較的標高の低い場所のトレイルの維持に力を注ぎ、イベントなども開催することにより数年で大幅に成長し、マウンテンバイクという競技が認知され、25年間の運営でWORCAは北米で最大の自転車擁護団体の1つにまで成長しました。

このような地道な努力の積み重ねで高山地帯へもマウンテンバイクで乗り入れが許可され、2012年にはウィスラーブラッコムがピークチェアをマウンテンバイクに開放。

こうしてウィスラーは世界で最も優れたマウンテンバイクの乗車地へと進化してきたのです。

と、メッカと言われるウィスラーも、昔はマウンテンバイクがマイナーで乗りにくかったんだよという歴史を紹介しました。