6時半起床。天気予報通りの凄まじい雨の朝、オールドゴーストロード出発の日。

予想はしていたけど、なかなかの激しい雨音に怯まないよう自分を奮い立たせながら出発の最終的支度を進める。

7時45分、シャトルしてくれるHike and Bike Serviceへ到着。

今日から3〜4日間、私たちのキャンパーはここで預かってもらい、出発地点まではおじちゃんのハイエースで送迎してもらう。希望する人には、最終日に車をトレイルの出口まで回して回してくれるみたい。

私たちは今回、天候の不安定さや、私の体力消耗具合が読めなかった為、車は預かってもらうだけにした。トレイルの出口からおじちゃんの家までは3キロなので自走帰ってきても全く問題はない。

Sedonvilleから1時間半ほど車で走り、9時半頃にトレイルヘッドへの駐車場へ到着。

 

ここに小さなシェドがあるので最終の身支度を整える。

特に今回大事なのは寝袋を絶対濡らしたくないと言うこと。バックパックはパンパンなので前ハンドルにキツく結びつけた。

ちなみに料理に必要な調理器具やガス、バンクベッドのマットレスは各ハットに備えられているようだ。なので今回私たちの持ち物は、食糧、着替え、スリーピングバッグ、ファーストエイドキット、あとはバイクのツールくらいだった。

水のことは少しトリッキーだった。

山の水を汲めばいいじゃないかって、そうなんだけど、どうやらこの辺りでは、1080という毒薬が撒かれているという警告の看板を見た。でもどうやら1年前に巻かれたものだったので恐らく気にしなくていいだろう、と、信じて飲料水を持って行くのはやめた。

それに、何リットルも重たい水を背負って走るのは、私にはあまりにも現実的ではなかった。

さて、何はともあれ大雨の中、出発。

オールドゴーストの鳥居を潜ると、最初に現れる一つ目の吊り橋を渡る。

初日は最大の難関だと思われる鬼のアップヒル。

最初のハット、Lyell Saddle Hutまで18km続く登り道をひたすら登って行く。

ずっと森の中を走っていたので天候が悪いのは正直あまり気にならなかった。

更に幸いなことにしばらくすると、青空も垣間見れてきた。

しかし一生続くのかような登り坂をセコセコ少しずつ進むのはなかなか辛かった。長い登り道は次第に腰への負担を感じるようになり、細かく休憩を取りながら進んでいく。

と、その時、何か生き物が目の前を横切った。

それが私にはコーギー犬のような豚のようなものに見えた。なんの動物かはっきりとはわからなかったが、何か2匹フワフワとした丸い生き物がトコトコ森の中へ消えて行った。

その姿があまりにも可愛らしくて、その瞬間にまた気持ちが晴れて頑張ることができた。

 

途中に現れた、熱々なお湯が沸かせそうなヤカン

 

次第に酷くなる腰の痛み(まさき君は、私の苦痛への止まらない文句を聞かされると言う苦行)との戦いに打ち勝ち、出発から4時間でLyell Saddle Hutへ到着。

最初の難関ポイント18kmの登り坂を完走した。

この時点で2時。ハットがどんな感じなのか見に行く事に。

このハットがなかなかしっかりしていた。特に、トイレが画期的な仕組みで全く臭くなかった。もちろんボットントイレだけど、用を足した後にスコップいっぱいのおが屑を被せるシステムで、そのおかげか清潔感すら感じる秩序の良さ。あと、なんとシャワールームもあって、頭上に溜めてある雨水が、蛇口を捻ると出てくる仕組みになっていた。

この時間ではまだ今夜の宿泊者は誰も到着していないようだった。その代わりに先ほど見たのと同じ、フラッフィーな生き物を見かけた。

 

よくよく見てみるとそれはヤギさんだった。

この子は立派なツノが生えていたけど、ファミリーでたむろしていて、子山羊が可愛かった。

可愛かったんだけどこのヤギさん達、残り香が凄かった。

ヤギのチーズを食べた時に感じるヤギ臭さってやつ、それをめちゃくちゃ凝縮した匂いがしばらくこの辺りを立ち込めていた。野生のヤギってこんなに臭いんですね。

さて、この時点で2時。次にのハットGoast Lake Hutに向けてまだ進むかどうか検討。

次は12kmの道のり。なかなか遠い。

実はこのLyell Saddle Hutを初日の宿泊先に予約をしていた。

その上で出発前に確認したのだが、次のGoast Lake Hutの予約状況はベッドが16個中、10個空いているとのこと。恐らくその全部が埋まることはないだろう。

シャトルサービスのおじちゃんにも、明日の朝の降水量がひどいので、もし2時までに最初のハットに辿り着けたのであれば、次のハットまで移動することをオススメする。と、言われていた。

12km、頑張ってみよう!と、もう一度気合を入れ直し、再び出発。

Lyell Saddle Hutからしばらく走ると、ついに森もエリアを抜けて、段々景色がアルパインになってくる。天気も朝とは比べ物にならないほど、青空が広がってきて、進むことを選んだ私たちを励ましてくれてるかのようで嬉しかった。

そして遂にこの全行程の中で一番高い標高The Lyell Rangeまで登って来た。

この一番上に小さなシェルターがあるのだが、そこで唯一電波が拾えるので、そこでもう一度天候の確認と、Goast Lake Hutの予約状況の確認。

このレンジを走って行くと目の前にHevens Doorと書かれた看板が現れた。そしてその向こう側にはまさに天国への扉といった景色が広がっていた。

ずっと壁になってた山が開けて、反対側の景色が一望できた。

この景色を独り占めしてランチのサンドイッチを食べることのこの上なき贅沢なこと。

風の吹き抜けるところでもあった為、寒くて長居は出来なかったけど、この景色とサンドイッチのおかげで新しく力が湧いて来た。

そして更に良いことに、Hevens Doorにて今日の登りはほぼほぼ終了。この辺りはずっと道が狭く、岩がゴトゴトしているので、足を取られないように気をつけて進む。

 

そして遂にLyell Saddle Hutを出てからおよそ3時間経った5時半ごろ、Goast Lake Hutへ到着する。

初日30kmの道のりを成し遂げた。トータルで7時間ほどかかったが、完全なる達成感を感じることに成功した。

ハットの中に入ってみると、6人ほど先にもう到着していた。

ここでE-bikeのおじちゃん3人組と出会う。E-bike羨ましいなぁと話していたら、それがそうでもないらしい。

彼らは今日一日走ってみて、どうやら最終日までE-bikeのバッテリーが保たないことが判明したらしい。なので、今日はここで泊まり、明日は今来た道を引き返して帰らないといけないらしい。

そしてウェストポートで新たなバッテリーをゲットし、次は出口から逆走して途中までを走り直すという計画に変更するらしい。

なのでもし、E-bikeでこのミッションを遂行しようとしてる人がいるならやめておいた方がいいのではなかろうか。

そんな話をしながら、ビショビショになった靴下等や雨具をハングしたり、寝床を作ったりなんやかんや終わらせて、早速今日の晩ご飯を温める。

パウチに入ったリゾットがあったかくてとっても美味しかった。

ここで、先ほどのおじちゃん3人組が異様な光景を繰り広げだす。

なんとも大量のフルーツやチーズ等を貴族の晩餐かのようにテーブルに並べ始めたのだ。彼らは前日に食料をヘリコプターでここまで運んでいたらしい。なのでこの山小屋で今からフィーストを始めるらしい。

まず前菜にと、三種のチーズの盛り合わせとクラッカーに、たくさんのフルーツ。

まさか山小屋で貴族ご飯を始める人達に遭遇するとは。そんなに食べ切れるわけないからと、その場にいた私たちもインバイトしてくれた。こちらからしたら、めちゃくちゃラッキー。今日の晩ご飯はリゾットのみの予定がまさかのフレッシュフルーツやチーズが食べれるだなんて。

その前菜の後は、メインに大きなステーキをジュージュー焼いてローストベジタブルと一緒に食べていた。その光景が異色すぎて、おかしくてたまらなかった。

世の中にはいろんな遊び方をする人たちがいるもんだ。

そんなステーキを頬張ってるおじちゃん達を尻目に、もうお腹いっぱいで眠くなってきた私たちは9時半ごろ、早めの就寝タイムにつくことにした。

オールドゴーストロード2日目 大雨の中の絶景スカイライン(NZバンライフ84日目)

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